雪渓をあふげばそこに天せまる 秋櫻子
雪渓は夏日照るさへさびしかり 秋櫻子
雪渓に径はありけり踏みゆけば 秋櫻子
なほ高き雪渓が霧のひまにゆ 秋櫻子
雪渓をかなしと見たり夜もひかる 秋櫻子
戸の前に太刀の雪渓さかしまに 青畝
雪渓の霧まき騰り鳩はやる 楸邨
雪渓をすなはちくだる鳩見ゆる 楸邨
天の原雪渓の襞そろひたる 青畝
雲を被て雲に雪渓を垂らしたり 誓子
雪渓の下にたぎれる黒部川 虚子
仙丈岳雪渓太くつばらなり 秋櫻子
雪渓のここに尽きたる力かな 虚子
昼月を近く大きく雪渓に たかし
雪渓を踏み荒らす群れ疲れ見つつ たかし
天界に雪渓として尾をわかつ 多佳子
雄山へと雪渓を踏めり一歩づつ 秋櫻子
雪渓に下りてまたたく星おほし 秋櫻子
雪渓はなだれて吾にとどまれる 誓子
完全に吾がもの雪渓真正面 誓子
一瞬の日にも柔らぎ雪渓照る 多佳子
大雪渓太陽恋ひの面あぐる 多佳子
雪渓がごつそり痩せて豪雨晴れ 多佳子
大雪渓日輪の暈触れにけり 秋櫻子
真白にぞ雪渓懸る五月の日 秋櫻子
雪渓の雲くづれ落つ黒部谿 秋櫻子
雪渓に水分の神立ち給ふ 誓子
雪渓の下なる賽の河原思ふ 誓子
雪渓は立ちて汚れて人間味 静塔
わが胸に来て雪渓の雲岐れ 静塔
雪渓にゐしただ一人忘られず 誓子