和歌と俳句

釣忍 つりしのぶ

人知れず暮るる軒端や釣荵 草城

庭下駄に雫落しぬ釣荵 草城

夕風や空明に浮く釣荵 草城

依稀として暮るる比叡と釣荵 草城

釣荵けふは神田の祭かな 万太郎

星ひとつ光増しきう釣荵 櫻坡子

爪立ちの足うつくしや荵吊る 櫻坡子

大雨の軒端となりぬ釣荵 風生

夜の風の忘れ雫や釣荵 花蓑

ちらちらと葉の出そめたる釣荵 草城

自ら其頃となる釣荵 虚子

起重機の見えて暮しぬ釣荵 汀女

露とめて軒のしのぶの廻りけり 淡路女

来ぬ人を待つに堪へけり吊しのぶ 淡路女

あながちに見るともなしに吊荵 淡路女

夕闇の迷ひ来にけり吊荵 虚子

なつかしや木曽路の家の吊荵 たかし

つりしのぶ越してくるなりもらひけり 万太郎

すぐ前に塀がふさがる釣荵 たかし

谷原雀糞することよ釣忍 波郷