天瓜粉打てばほのかに匂ひけり
天瓜粉刷かれ溜りし眉根かな
心得てさし出す顔や天瓜粉
天瓜粉ところきらはず打たれけり
母肖なる瓜実顔や天瓜粉
くれなゐを籠めてすずしや花氷
風鈴の遠音きこゆる涼しさよ
風鈴や遠くどよもすはたた神
夕風や風鈴吊ればすぐに鳴る
月の隈風鈴ありて鳴り出づる
風鈴や月光かくも更けわたり
人知れず暮るる軒端や釣荵
庭下駄に雫落しぬ釣荵
夕風や空明に浮く釣荵
月さして岐阜提灯を昏うしぬ
岐阜提灯うす色もちて灯りけり
ありありと岐阜提灯の灯の穂かな
岐阜提灯まどかに灯る簷の闇
衣紋竹のシャツ風簷に廻る廻る
何もなき袂吹かれぬ扇風器
扇風器ややに止れば無表情
静けさや音いきり立つ扇風器
扇風器の風に触れゐる金蓮花
扇風器に立ちはだかりて涼みけり