行水のうしろで蟇の魔法かな
行水の妻も暮れゐる涼しさよ
行水の妻しろじろと立ち上る
行水の客に参らす豆ランプ
行水の大女房や灸の痕
肌ぬぎやこともをかしく乳房もつ
夏痩の貧しき肌をぬぎにけり
肌ぬぎやうらはづかしき乳二つ
肌ぬぎや七人の子に萎へし乳
肌ぬぎや乳も日焼けの浜娘
こそばゆく石に下り立つはだしかな
夕潮に泳ぐ素裸蜑の妻
大凪や乳房驕れる海水着
乳欲しき児につれなしや海水着
乳いまだ太らぬ少女海水着
白団扇一つ西日に置き放し
嬌羞や団扇を洩れて蛾眉二つ
しろがねを畳み秘めたる扇かな
白扇や乾き乾かぬ墨の痕
初蚊帳のしみじみ青き逢瀬かな
月さして山水浮ぶ絵蚊帳かな
蚊帳越しの灯の明るさに読み更くる
覚めきらぬ頬に風の蚊帳触るるなり
蚊帳の裾うなじを伸べてくぐりけり
清風の闇に白蚊帳ほのかなる