和歌と俳句

日野草城

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行水のうしろで蟇の魔法かな

行水の妻も暮れゐる涼しさよ

行水の妻しろじろと立ち上る

行水の客に参らす豆ランプ

行水の大女房や灸の痕

肌ぬぎやこともをかしく乳房もつ

夏痩の貧しき肌をぬぎにけり

肌ぬぎやうらはづかしき乳二つ

肌ぬぎや七人の子に萎へし乳

肌ぬぎや乳も日焼けの浜娘

こそばゆく石に下り立つはだしかな

夕潮に泳ぐ素裸蜑の妻

大凪や乳房驕れる海水着

乳欲しき児につれなしや海水着

乳いまだ太らぬ少女海水着

白団扇一つ西日に置き放し

嬌羞や団扇を洩れて蛾眉二つ

しろがねを畳み秘めたるかな

白扇や乾き乾かぬ墨の痕

初蚊帳のしみじみ青き逢瀬かな

月さして山水浮ぶ絵蚊帳かな

蚊帳越しの灯の明るさに読み更くる

覚めきらぬ頬に風の蚊帳触るるなり

蚊帳の裾うなじを伸べてくぐりけり

清風の闇に白蚊帳ほのかなる