夏痩のこの身いとしき湯あみかな
面影も失するばかりに夏やつれ
山賤の夏を痩せたるあぎとかな
夏痩も知らぬ女をにくみけり
五尺七寸すずしきばかり夏痩せて
避暑びととおぼしき都てぶりかな
避暑客のつらなり出づる夕戸かな
たましひのほとほとわびし昼寝覚
うつし世にかなしく覚めし昼寝かな
八十の尼前昼寝の仏顔
夕風や昼寝さめたる人と猫
方丈をなのめに断ちて昼寝かな
川狩にいつもの顔の揃ひけり
夜振の火ぽちぽちとして上の瀬に
御中元と書いて墨痕淋漓たり
土用灸艶なき肌を焦しけり
遅月の出て終りたる花火かな
花火舟櫓音ときめき溯る
閑けさや花火消えたるあとの星
晴れし夜の紅提灯やすずみ舟
水暗く櫓音生れぬ橋涼み
涼む娘にぞつこん惚れてしまひけり
踊子のそれぞれ恋をもちにけり
七人の女に恋はれ音頭取
祭の灯つきたる島や波の上