和歌と俳句

納涼 涼み

子規
名にしあふ あきのみくにの 夕涼み 川ふく風に 夏をわすれて

子規
川すずみ 風ふくかたを 打見れば ふじのたかねに 雪ぞのこれる

子規
こぎもせで 帆をふく風に 舟人の 水掬びつつ 夕涼かな

一葉
たち出でていざ涼まばや夕がほの垣根に月もかかりそめにき

のりあげた舟に汐まつ涼み哉 子規

ぬけ裏をぬけて川べのすゞみかな 子規

烏帽子着て加茂の宮守涼みけり 子規

神に燈をあげて戻りの涼み哉 子規

みちのくへ涼みに行くや下駄はいて 子規

松嶋の闇を見てゐる涼みかな 子規

筧にも滝と名のつく涼みかな 子規

湖に足ぶらさげる涼みかな 子規

御仏も扉をあけて涼みかな 子規

痩骨の風に吹かるる涼みかな 子規

我も人白きもの着る涼みかな 漱石

女多き四條五條の涼みかな 虚子

橋涼み笛ふく人をとりまきぬ 虚子

煙管のむ手品の下手や夕涼み 虚子

鼻緒ゆるき宿屋の下駄や夕涼み 虚子

晶子
誰れが子か われにをしへし 橋納凉 十九の夏の 浪華風流

端納涼しをれど明日は別れかな 碧梧桐

蛍来しあとや蝉飛ぶ端納涼 碧梧桐

明日渡る湖の眺めや端納涼 碧梧桐

涼む子等床机舁き行く川の中 碧梧桐

晴れし夜の紅提灯やすずみ舟 草城

納涼船消え易き燭をつぎにけり 橙黄子

一人離れて筏とびゆく納涼かな 泊雲

納涼舟解くや纜手探りに 泊雲

鼠花火に飛つかれたる涼かな 花蓑

水の月右に左に舟涼み 花蓑

たまたまに主人も居りし門涼み 橙黄子

吾妹子を乗せて漕出て浪すずみ 青畝

がわがわと蓮吹きすさぶ涼かな 花蓑

納涼やすでに尾花の淀堤 爽雨

橋裏を皆打仰ぐ涼舟 虚子

燈台の下暗がりの磯涼み 花蓑

句をとむる堂の灯はある涼みかな 爽雨