和歌と俳句

晩涼

播水
晩涼や夜店はてたる吉田町

虚子
晩涼や池の萍皆動く

草城
晩涼や朶雲明るく比叡憂鬱

草城
晩涼や奏楽を待つ人樹下に

草城
晩涼や氷を削る音しきり

草城
晩涼や消なば消ぬがに山の襞

秋櫻子
山魚釣晩涼の光を焚きゐたり

秋櫻子
晩涼や湖舟がよぎる山の影

風生
晩涼や流れやまざる刈藻屑

汀女
晩涼や運河の波のややあらく

汀女
晩涼の子や太き犬いつくしみ

立子
晩涼やいつしか濃ゆき海の藍

虚子
晩涼や大海椰子の蔭に立つ

虚子
晩涼や火焔樹竝木斯くは行く

虚子
晩涼や謡の会も番すすみ

花蓑
干網に晩涼の日のかゝりけり

汀女
晩涼の簾をさへもあげぬまま

汀女
晩涼や座敷相似て子供似て

わが袂かるし晩涼の橋灯る 信子

汀女
晩涼に空に連らなる出船あり

草田男
晩涼の銀貨笑む吾子みなたまもの

林火
晩涼の砂は雲母をしづませぬ

草城
晩涼のまなざしのふと不貞なる

虚子
生かなし晩涼に坐し居眠れる

林火
晩涼やさびしきまでに草の丈

立子
晩涼のましろき蝶に今日のこと

林火
波くぐるかに晩涼の灯の浸る

爽雨
晩涼の湖の入江は町ふかく

万太郎
晩涼やふと人声の来ては去り

万太郎
晩涼や月いついでし立咄

立子
晩涼の縁にしみじみ父憶ふ

立子
晩涼やねぐらの烏かしましし

林火
晩涼のさびしや痩せるだけやせて