五十嵐播水
町中にある踏切や明易き
その日その日命危き極暑かな
縁側の極暑の煤やいづこより
この極暑越す望なき病かな
雷の余韻の下の京都かな
晩涼や夜店はてたる吉田町
盆の月駅へ二里なる浜別墅
青嵐早苗凹めて消えにけり
青嵐のタオルみな飛びて庭の木に
青嵐や湖きはまりて川となる
湖晴れて青嵐いたることしきり
夏の川灯影ちぢらせ汪洋と
打たれ来し肩の軽さや滝の茶屋
滝風に揺れゐる旗やビヤホール
投網人に遅月赤く浮びけり
川狩の今夜の網を繕へり
川狩の相談成るや風呂の中
ビヤホールに入りて明るき疲れかな
真向に比叡明るき袷かな
一痕の月に旅愁や冷奴