和歌と俳句

五十嵐播水

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行水の妻に声かけ外出す

行水の雫まだある庭の月

泳ぎ宿西日あたれる碁盤かな

遠泳の指ねんごろに折りにけり

遠泳に耐へたる四肢を眺めけり

麦笛や迎ひに来る姉のあと

中元の使患者にまじり来る

七夕竹立つるや色紙地にのこる

七夕竹捨てて流れぬ水なりし

盆踊の太鼓に遠し浜別墅

蟻呑みて砂おさまれり蟻地獄

堂と堂対し暮るるやほととぎす

金魚玉隣へ贈り退院す

草城見舞ふや矢車草の路を択る

面がほの壬生の子供や花枳殻

牡丹崩れて黒血のごとし土真昼

客にとる昼寝すすぎや百日紅

歩兵第八旅団司令部百日紅

書斎兼寝室机上百合一輪

夕潮に纜張りぬ月見草