和歌と俳句

盆の月

土べたに辛子さめけり盆の月 白雄

立臼に子を安置して盆の月 一茶

笛吹てはせ山越る盆の月

虚無僧の深あみ笠や盆の月 子規

町の出ても白楊高し盆の月 碧梧桐

此月の満れば盆の月夜かな 虚子

盆の月駅へ二里なる浜別墅 播水

盆の月暫し燈籠と重なりぬ 風生

城かべに松の暗さや盆の月 石鼎

旅に居て仏恋しや盆の月 石鼎

一幕を残して出でぬ盆の月 みどり女

母歩く庭と思ひぬ盆の月 かな女

ツエツぺリン飛び來し國の盆の月 虚子

うす雲のたゞなかにして盆の月 かな女

木がくれになりし遠さや盆の月 万太郎

雲海の上に月あり盆の月 青邨

盆の月母の忌日を此の浦に かな女

盆の月柱に照つてゐたりけり 万太郎

大槐樹盆會の月のうす幽し 蛇笏

湾をなす島山ひきし盆の月 野風呂

盆の月侘び寝の蚊帳にさしわたり 淡路女

故里を発つ汽車に在り盆の月 しづの女

盆の月ひかりを雲にわかちけり 万太郎

盆の月穏かに照る田の面かな 素十

ふるさとの大もちの木の盆の月 素十

ふるさとに墓あるばかり盆の月 花蓑

志賀の雲やぶるるたびに盆の月 青畝

山里の盆の月夜の明るさよ 虚子

こころよく痰の切れたる盆の月 草城

盆の月こよひは盈ちぬ照りにけり 草城

盆の月子は戦場のつゆときゆ 蛇笏

盆の月あげたる沖となりにけり 万太郎

盆の月鴎外詩壁照りいづる 秋櫻子

去るもの日々にうとからず盆の月 万太郎

湖に出て光体はただ盆の月 誓子

盆の月お山の空は夜もあおし 風生

ねむる閧ノ葉月過ぎるか盆の月 蛇笏

遅く出て海を鎮むる盆の月 林火

遍照に八つの峰や盆の月 青畝