菊の香や灯もるる観世音
くらがりに供養の菊を売りにけり
仁王尊供養の菊の挿されたり
花かげに花かげに蕾露の菊
門入れば竃火見えぬ秋の暮
秋天や白根のけむり雲となり
秋雨やほかほか出来し御仏飯
秋水に蝶の如くに花藻かな
秋の炉に裸の父と裸の子
迎火を女ばかりに焚きにけり
二家族うち連れ戻る墓参かな
香煙や無縁仏に濛々と
盆の月穏かに照る田の面かな
ふるさとの大もちの木の盆の月
家持にゆかりの温泉薄月夜
揚舟に高張立てし踊りかな
門川をやがてぞ去りぬ霊送
精霊舟つゞき流れてまはるあり
庭石に線香花火のよべの屑
蓼の花豊の落穂のかかりたる
盆礼やひろびろとして稲の花
悲しけれ盆寺の前に子を叱る