藁砧とんとんと鳴りこつこつと
黄葉は散り紅葉は旺んなり
また一人遠くの蘆を刈りはじむ
蘆刈の戻の堤どこまでも
秋蝶の少き国の旅つづく
日がなゐて葭刈る人のただ一人
むら雀とび立つて居り葭の花
菊つみてはや盛り上る籠の中
上海のけさの寒さの菊の市
病む妻に子のことづけの菊の花
刈上や小菊上げたる仏さま
窓の下かやつり草の花もあり
大いなる蒲の穂わたの通るなり
残菊や添竹はねて風のまま
ふるさとに近づく心末枯るる
流灯に下りくる霧の見ゆるかな
灯籠は粗末に僧は大智識
流燈の遠くも去らず霧の中
人中に西瓜提灯ともし来る
藤豆の咲きのぼりゆく煙出し
新しき笠をかむりてさゝげ摘む
十五夜の野にあかあかと鴨威し