たそがるる大紫といふつつじ
風つよしつつじの花の吹き溜り
花びらのうすしと思ふ白つつじ
流れきて次の屯へ蝌蚪一つ
はんの木の花咲く窓や明日は発つ
はんの木の花踏まれあり花粉黄に
忍冬咲く故蜂にさされたる
墓のなき十坪あまりやつくづくし
鶏も家鴨も白し春の水
白鳥に向けし眼鏡に春の水
春水や蛇籠の目より源五郎
春山に間歇泉の今噴くと
学校をなまけて春の山にくる
野に出れば人みなやさし桃の花
春寒き村を出づれば野は広く
海を見てをれば一列春の雁
春の雪波の如くに塀をこゆ
火の山の太き煙に春の星
白鳥のとび行く空の春の雲
春塵や観世音寺の観世音
関門を渡れば春の雨強く
春泥に押し合ひながらくる娘
泡のびて一動きしぬ薄氷