岩すべる水にうつぶす椿かな
人仰ぐ我家の椿仰ぎけり
道ばたに早蕨売るや御室道
一堂のあれば一塔百千鳥
田打鍬一人洗ふや一人待ち
田打蓑きて御手洗に口すすぐ
額の芽のめだちて青む二つ三つ
歩み来て芽立ちし額に足とどむ
おほばこの芽や大小の葉三つ
甘草の芽のとびとびのひとならび
芽をふいて低きところの一枝かな
邪魔なりし桑の一枝も芽をふける
ひざまづき蓬の中に摘みにけり
卵置く三色菫の花の中
親牛も仔牛もつけしげんげの荷
わが影に角さし出して田螺ゆく
初蝶に物干竿の一文字
春菊の大きな花は黄が褪めし
蝶とぶや郵便函もさしのぞく
庭に立つ母に明るき蝶の空
門内の茶摘畠を顧みし
門を出て大廻りして苗代へ
種蒔の一人一人の五六人