顔あげてからかはれをり蓮根掘
仔馬ひく橇をみんなが振り返る
娘等やそれぞれのひく空の橇
橇をひく犬立ち止まり主見る
藤棚も枯山吹も剪みあり
前山に替へし障子を閉しけり
雪つみて小さき墓の並びをり
柊の花一本の香かな
寒肥や花の少き枇杷の木に
蔵廂今年の雪にかく撓み
雪折の松のきれ蔓吹き離れ
雪山の前の煙の動かざる
枯蔓に雪柔かにひつかかり
いろいろの面を被る子雪に立つ
凍鶴のやをら片足下しけり
凍鶴のひつかかりゐる枯木かな
紅葉ちる常寂光寺よき日和
箒さき吹き返さるる落葉かな
落葉道みづうみ見えて下りかな
落葉ふむ分れし道のまた会へり
蹴ちらせば霜あらはるる落葉かな
街路樹の夜も落葉をいそぐなり
砲音のゆるがす土や麦を蒔く
冬の蜂おさへ掃きたる箒かな
虻よりも大きな冬の蠅ゐたる