和歌と俳句

高野素十

芝焼く火見つつ心定まらず

芝焼くや醜き虫の躍り出づ

芝焼いてもぐらの土の相隣る

庭さきの焼かれし芝を踏みて訪ふ

畦焼くやもぐらの土に燃えどまり

葛飾の大堤防を焼く日かな

老幹の横たはるあり夜の

門前やまづ老梅の一木あり

塗畦に下りて燕のはたはたす

山茶屋や雪解の風に旗高く

棚田より出来はじめたる雪間かな

麦踏のでてゐる島の畑かな

海苔舟や波に追はれて棹せる

春月や室生寺の僧ふところ手

吹きそめし東風の水辺に下り立ちぬ

弘法寺の坂下り来ればん鶏合

畦漏の走りわかれや花薺

籬より麦踏み出でぬ昼霞

雲雀籠かつぎてゆくは旅のもの

かつぎゆく雲雀の籠は空なりき

雛店に美しき花下がりけり

笏もちて面かくるるかな

種物屋隠元豆はうすぼこり