鶯の筧のみほす雪解哉 子規
晶子
やはらかに心の濡るる三月の雪解の日よりむらさきを著る
雪どけに下駄はく僧や天竜寺 虚子
雪どけや木曽の裏山家二軒 虚子
楫取のつぶらなる眼や雪解風 水巴
雪解水書架の上より流れけり 碧梧桐
一番の渡り漁師や雪解風 碧梧桐
雪どけや屋根を走るは鼬かな 虚子
僧は里に男は納屋に雪解かな 虚子
赤彦
ところどころ野のくぼたみにたたへたる雪解のにごり静かなるかも
雪解風牧場の国旗吹かれけり 水巴
雪解の峠の茶屋の戸口かな 石鼎
赤彦
思ひかね路地を入り来れ雪どけの泥はおどろに明るかりつも
雪解や西日かがやく港口 石鼎
雪解や尋ね侘びたる田舎町 泊雲
雪解のはねとぶ泥や松並木 泊雲
雪解や渡舟に馬のおとなしき 蛇笏
月かけて山河とよもす雪解かな 石鼎
晴天の枝に鳥来る雪解かな 石鼎
濁水にかゞやく日ある雪解かな 石鼎
谷深く橋落ちてある雪解かな 櫻坡子
天辺に一羽鴉や雪解風 麦南
雪解や湖舟に洗ふ旅硯 麦南
竜髯に雪解雫の艶やかさ 泊雲
大靄の襲へる雪解畠かな 泊雲
月褒めて雪解渡しや二三人 蛇笏
泥まみれの振る尾長さよ雪解牛 橙黄子
雪解の雫すれすれに干蒲団 虚子
雪解や鳥籠にかけて干せる足袋 花蓑
雪解川峠の下を衝きにけり 喜舟
茂吉
洞窟の 中にみなぎる 雪解水 帝王もつねに 召したまひにき
茂吉
アルペンの 雪解の水の とどろきを Keimfreiと 注解をせり
高嶺や日にこたへ鳴る雪解川 石鼎
田ずそに親しく雪解水流れそめたり 放哉
裏山の雪とけそめし筧かな 風生
にぎはしき雪解雫の伽藍かな 青畝
雪解水どつとと落つる離宮哉 普羅
雪解川名山けずる響かな 普羅
茶屋起きて雪解の松に煙らしぬ 普羅
雪解や妙高戸隠競ひ立つ 普羅
雪解風暁の戸を打ち居たり 普羅
雪解のゆらゆらとして枝垂梅 青畝
橋の裏大きくしみる雪解かな 青畝
講寺や雪解しづくに仆れ杖 爽雨