山寺の宝物見るや花の雨
三味ひくや花に埋れて瞽女一人
夜櫻や用ありげなる小提灯
夜櫻や紅提灯のもえて落つ
夜櫻や芸者幇間の六歌仙
花見船菜の花見ゆるあたり迄
山駕や酒手乞はれて櫻人
汐干船浮み上りて歸るなり
蛤に劣る浅蜊や笊の中
繪暖簾に東風吹く茶屋や弁天座
春の水弁天堂を浮めけり
舟棹に散りて影なし柳鮠
花衣脱ぎもかへずに芝居かな
装束をつけて端居や風光る
苗代や西の京まで道遠し
髪結は早見たと云ふ二の替
雪どけに下駄はく僧や天竜寺
雪どけや木曽の裏山家二軒
梅林に行く上下のわたしかな
小僧皆士の子や梅の寺
野を行くや離落離落の梅を見て
城山の鶯来鳴く士族町
坂の茶屋前ほとばしる春の水
わが為に皆野に遊ぶ乳母が宿
野遊びの草臥足を道後の湯