和歌と俳句

苗代

すみきるや苗代水の上流れ 子規

鷺下りて苗代時の寒哉 子規

苗代の雨みどりなり三坪程 子規

苗代や西の京まで道遠し 虚子

晶子
大琵琶のみづうみよりも竹色の苗代田こそひろびろと居れ

門辺なる苗代水の澄める朝 虚子

霽れ際の明るき雨や苗代田 草城

苗代の灯に靄下りし深夜かな 月二郎

苗代の乏しく見えて故郷かな 石鼎

苗代や浄き白紙を鳥おどし 淡路女

苗代や沼の眞菰と風かよふ 秋櫻子

ゆたかなる苗代水の門辺かな たかし

なんとよい日の苗代をつくること 山頭火

張糸に蝶吹きあたる苗代かな 爽雨

門を出て大廻りして苗代へ 素十

苗代に落ち一塊の畦の土 素十

押入れに灯のさしこめり苗代時 耕衣

なつかしや苗代水に畦とぎれ 汀女

苗田水堰かれて分れ行きにけり 普羅

代田成り懸境なる灯をうつす 

苗代や色濃き緑惜しまずに 誓子

今年又径の角なる苗代田 虚子

小諸まだ陽気遅れて苗代寒 虚子

苗代より次の苗代に家五軒 青畝

雪嶺に覗く苗代かぐろしや 波郷

野の池も苗代水もみなぎらひ 爽雨

苗代にいのち噴かざる籾が見ゆ 誓子

夕なる苗代水の心知る 青畝

苗代田一枚にして大いなる たかし

みちのくの苗代の辺にその寒さ 爽雨

苗代を割つてあまたの長方形 誓子

苗代の密生密の密なるもの 誓子