皆吉爽雨
椿手にものを茹でゐる地獄かな
境内を大峰道や遅ざくら
陵守の退けて谷ゆく夕ざくら
入学をさせてもどりの花の旅
乾きつゝ床几の雨や遅ざくら
張糸に蝶吹きあたる苗代かな
防風摘む砂丘に友はすぐ遠く
瀬にくだり淵に高まり梅の路
この駅も雨の遍路の乗りしのみ
お遍路の野を汽車とほることもなく
解く桑に笠うたれゆく遍路かな
向きあうて茶を摘む音をたつるのみ
草焼きし庭あり兵の病舎訪ふ
白魚火の近きは雨のそゝぐ見ゆ
尾根わたる杖もさだかに遍路かな
道それし遍路とゆけば磨崖あり
塩田の見えくるなさけ遍路道
鯛網の沖とは聞けどうち霞み