皆吉爽雨
夫婦して梅剪りくれし茶店かな
床下を畝のはしれり梅見茶屋
下りかゝるつばさを張りし雲雀かな
春昼や大鍵さげて案内僧
室生寺の橋のたもとの遍路宿
憩ひつゝ肩うちあへる遍路かな
蚕棚たつ大仏壇の左右かな
桑の実の茶うけ出されし飼屋かな
学問の襖ひとへに蚕飼かな
山内に雪解の滝のかゝりけり
岨道に滝の虹たつ雪解かな
桶替へて住みかはりをり春の雨
春雨の雲より鹿や三笠山
遍路杖よせめぐらせる香炉かな
石段をひろがりのぼる遍路かな
迷ひきて丹波みちなり山ざくら
蚕の神の養蚕訓をうつばりに
あなぐらへ桑踏み入るゝ蚕飼かな
汐干潟籠さげて潮湯の廊下かな
越してきて掃除好きなり濃山吹