皆吉爽雨
春昼や海女もきてゐる真珠店
塀沿ひに村あたゝかや西大寺
さきがけし繭を仏に蚕飼かな
蚕ざかりの廚おはす仏かな
積桑のかげに風呂たつ飼屋かな
臼のべも客の床几や蓬餅
つばくらや廓通りも旅のみち
魚島の鞆の波止場の床几かな
九頭竜を真下に越ゆる雪崩かな
瀬がしらに二三樹とべる雪崩かな
落ち瓦積まれて伽藍雪解かな
九頭竜を窓に機織る雪解かな
天守より鷺追ふ声や春の雨
よろけ来て仮寝をかはる蚕飼かな
籠編んでひとつ家あり茶摘道
落ち瓦負うて門出る雪解かな
開けたてにどつと瀬音や雪解宿
さゝへ木の一つは花の梢まで
陋巷にあけし裏門花の宮
廻廊を潮くぐり鳴る干潟かな
廻廊に書を抱く禰宜や夕干潟