和歌と俳句

皆吉爽雨

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15

春昼や海女もきてゐる真珠店

塀沿ひに村あたゝかや西大寺

さきがけし繭を仏に蚕飼かな

蚕ざかりの廚おはす仏かな

積桑のかげに風呂たつ飼屋かな

臼のべも客の床几や蓬餅

つばくらや廓通りも旅のみち

魚島の鞆の波止場の床几かな

九頭竜を真下に越ゆる雪崩かな

瀬がしらに二三樹とべる雪崩かな

落ち瓦積まれて伽藍雪解かな

九頭竜を窓に機織る雪解かな

天守より鷺追ふ声や春の雨

よろけ来て仮寝をかはる蚕飼かな

籠編んでひとつ家あり茶摘道

落ち瓦負うて門出る雪解かな

開けたてにどつと瀬音や雪解宿

さゝへ木の一つは花の梢まで

陋巷にあけし裏門花の宮

廻廊を潮くぐり鳴る干潟かな

廻廊に書を抱く禰宜や夕干潟