皆吉爽雨
ゆく雁やふたゝび声すはろけくも
行春や鏡の前の畳擦れ
囀や糞おとしたる枝を替へ
講寺や雪解しづくに仆れ杖
水取や磴につきたる火屑みち
そこはかとかげろふかゞみ話かな
草庵や客泊むる間の雛仕舞
春風や書をひらきたる長渡舟
草摘むや午笛鳴りあふ淀のそら
木蓮にふる煤足やゆるみつゝ
水取や僧形も見ず詣で去る
のどかさの風鐸空にこはれをり
手のひらにのせて移せる苗木かな
人だかりしつゝ焚かれぬ花篝
夜桜の提灯売れてつゞきけり
蘆の芽や少年釣れるうき真赤
畑打の鍬のかゞやきばかりかな
天懸る雪崩の跡や永平寺
禅堂へ道の割りある雪崩かな
女ものぬぎたゝみあり畑打
花の座も三味ひく人に西日かな