櫻鯛到りて祝ぎは厨より
春草の一座一座と思ひ踏む
春草を踏みてをりをり堆し
踏青のことに蓬の踏みはづみ
浮びつつ蝌蚪まだ水の底のもの
大辛夷咲きつつつぼみ餘りあり
それぞれにうかぶ宙ありチューリップ
人ゆきてたんぽぽ踏まれざりしこと
たんぽぽのさきがけなれば黄のいびつ
春愁の眼あげて雲もなぐさまず
この峡に禿のわらび山一つ
庭に見る病後の散歩濃山吹
湯殿にも春夜の佛寺泊り
藪あれば椎茸つくり春山路
岩一つ越えてうちべの春の水
春潮の淡路の里輪ひたし見ゆ
古利根の釣場洗場蝌蚪むるる
先頭のうづまきすすみ蝌蚪の列
藤垂るる淵にぞ行をとどめたる
懸崖の藤のをりをり揺れうすれ
耶馬溪もここら野をなし代田照る
代田あり幣ひるがへり富士うつり
野の池も苗代水もみなぎらひ
籾蒔いて移る老足高あがり
籾を蒔く拳の宙にあそぶ時