和歌と俳句

雪解

人声の谺もなくて飛騨雪解 普羅

簗かけし岩もかくるる雪解かな 普羅

山吹にしぶきたかぶる雪解滝 普羅

汽車たつや四方の雪解に谺して 普羅

雪解の音をききつつ籠り居り 虚子

雪解の俄に人のゆききかな 虚子

月日経ぬ雪解の雫百方に 鷹女

大いなる雪解の中に生きて逢ひぬ 楸邨

首縮め雪解雫を仰ぎつつ 虚子

解けかけし雪そのままに氷りたる 虚子

あかあかと白樺を透く雪解川 蛇笏

避くるな押せと雪解の瀬鳴り昂り来 楸邨

岩にやさしく朴にはきびし雪解の風 楸邨

雪解風といふ風吹きし小諸はも 虚子

雪解する無閧フ谷に駒嶽の壁 蛇笏

墓の上に嘴太鴉雪解急 蛇笏

雪解山奥めく雲のたたづまひ 蛇笏

雪解川濁る勢ひを合しけり 多佳子

雪解犀川千曲の静にたぎち入る 多佳子

よろこびに合へり雪解の犀千曲 多佳子

こゑ出さばたちまち寂し雪解砂洲 多佳子

ひざついて雪解千曲をひきよせる 多佳子

犀千曲雪解を合はす底ひまで 多佳子

庭雪解無言を守れる療養に 爽雨

風いつもかの樹に起り森雪解 爽雨