採油音刈田きらめく露を帯び
晩稲音なし採油機械はみな動き
噴油待つ帰燕渺茫たる下に
ここに生れて油塗れに這ふ蝗
秋風の油虹なす雄物川
クリスマスゆき交ひて船相照らす
クリスマス遠き木枯の宙は覚め
冬枯を見ねば横文字ばかりの街
雪は雫に夜は妻の手あたたかし
枯るる崖腕が出て子の顔が出る
一つ冬濤見をはりてまた沖を見る
風湧く雪嶺声も朝日も確かとなる
春の湖夜の氷の下明るし
甘露煮や嶺のうしろに夜空落つ
夜の屋根に女声わき雪おろし
秋風や石の割目が水に透き
蜩や薄はいまだやはらかし
瑠璃光仏露の重たき屋根を置く
貨車洗ふ水が光りぬ鰯雲
春の暮暗渠に水のひかり入る
鉄の上に寸余の灯の輪蛾がねむる
奥嶺奥嶺へ雨の燕と電線と
避くるな押せと雪解の瀬鳴り昂り来
岩にやさしく朴にはきびし雪解の風