老猫の恋のまとゐに居りにけり
古雛を今めかしくぞ飾りける
木々の芽のわれに迫るや法の山
うなり落つ蜂や大地を怒り這ふ
ものの芽のあらはれ出でし大事かな
春山の名もをかしさや鷹ケ峰
見るうちにものあらはれ来涅槃像
春雨や忽ち曇る鷹ヶ峰
もたし置く春雨傘や茶室の戸
斯く翳す春雨傘か昔人
春雨や少し水ます紙屋川
春雨の傘さしつれて金閣寺
くぬぎはらささやく如く木の芽かな
うち笑める老を助けて青き踏む
踏青や川を隔てて相笑める
踏青や古き石階あるばかり
装ひて来る村嬢や芹の水
この庭の遅日の石のいつまでも
暮遅し人ちらばりて相寄らず
啓書記の達磨暗しや花の雨
一片の落花見送る静かな
静かさや松の花ある龍安寺
花茶屋に隣りて假の交番所
うたたねのさめて日高し櫻人
鹿の峰の紺屋なほあり豆の花
行春や西山の辺の丹波路