和歌と俳句

花見

花茶屋に隣りて假の交番所 虚子

うたたねのさめて日高し櫻人 虚子

花疲れ一つ床几に女同志 みどり女

虚子庵に至り坐りぬ花疲 たかし

漕ぎ乱す大堰の水や花見船 虚子

みな袖を胸にかさねし花見かな 草田男

おのがじし道をひろへる花疲れ 夜半

花の座も三味ひく人に西日かな 爽雨

お茶古びし花見の縁も代替り 久女

花の幕かけはなれたる河原にも 花蓑

宴未だはじまらずして花疲れ 虚子

しどけなく帯ゆるみ来ぬ花衣 淡路女

前の人きらびやかなる花疲れ 夜半

空いてゐし床几にかけぬ花疲れ 夜半

花疲れ東寺の塀に沿ひ曲る 虚子

対岸の花人は唯行く如し 虚子

青ざめてうつむいてをり花の酔 虚子

遠く花見のさわぎを聞いてゐる 山頭火

草履の緒すこしかたくて花衣 波津女

人妻の姉と連れ立つ花衣 波津女

花衣足袋をよごしてかへりけり 波津女

ひそやかに花見弁当うちかこみ 虚子

花人に篠つく雨となりにけり 淡路女

ぬぎ捨てて一夜明けにき花衣 波津女

足袋ぬいでつられ覚えぬ花衣 波津女

さくら二三本でそこで踊つてゐる 山頭火

さくらちる暮れてもかへらない連中に 山頭火

花見べんたうぽろつと歯がぬけた 山頭火

桜人舟の莚にひぢまくら 青邨

岩惣の塗脇息に花疲れ 野風呂

花人にたちつけはきし案内者 野風呂

物売とならび腰かけ花疲 蕪城