海苔舟の棹さい出づる籬かな
久米の子ら更衣の野を焼ける見ゆ
涅槃図にまやぶんにとぞ読まれける
少年のこちらむきたる雛あそび
藪垣や見馴れたれども落椿
揩スけし母をしたがふ智恵詣
翠黛とひもすがらある桜狩
大顔をむけたまふなる寝釈迦かな
綻びてありたる梅のうてなかな
おのがじし道をひろへる花疲れ
ならびたる柳の糸の間かな
低きより柳の枝の垂れにけり
浮びをる甘茶の杓をとらへけり
彫みある寝釈迦のまとひたまふもの
三段となるところある糸桜
花御堂四つの柱見ゆるなり
獣に青き獅子あり涅槃像
鞦韆をすてたる人とつれだちぬ
前の人きらびやかなる花疲れ
空いてゐし床几にかけぬ花疲れ
麦踏のこちら向いてもただひとり
蛇の円かなる座や涅槃像
見下ろせる八幡の藪や春の山
春山に二十四孝の屏風たつ