和歌と俳句

涅槃 寝釈迦

涅槃會や何見て歸る子供達 子規

涅槃像胡蝶の梦もなかりけり 子規

涅槃會の一夜は闇もなかりけり 子規

涅槃像仏一人は笑ひけり 子規

涅槃像鰒に死なざる本意なさよ 漱石

里の子の猫加へけり涅槃像 漱石

山寺や壁一杯の涅槃像 虚子

白々と寝釈迦の顔の胡粉かな 虚子

裏打の反古の悲しや涅槃像 虚子

茂吉
涅槃会をまかりて来れば雪つめる山の彼方に夕焼のすも

門前の花菜の雨や涅槃像 蛇笏

落椿重なり合ひて涅槃像 漱石

紺青の空に月あり涅槃像 虚子

涅槃図を掛けんとすなる僧五人 虚子

御涅槃のかたきまぶたや雪明り 普羅

簷雫いよいよしげし涅槃像 泊雲

護国寺の涅槃年々拝みけり 喜舟

太柱二本かくれぬ涅槃像 喜舟

わが干支の牛も侍りぬ涅槃像 禅寺洞

涅槃像あなんの顔のとはに哭く 禅寺洞

人々の眼なまなまし涅槃見る 蛇笏

お涅槃や大風鳴りつ素湯の味 水巴

涅槃会に吟じて花鳥諷詠詩 茅舎

なつかしの濁世の雨や涅槃像 青畝