和歌と俳句

高浜虚子

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さいてものぞゆかしききなこ飯

木瓜咲いて薬いやがる女かな

春の夜の金屏に鴛鴦のつがひかな

車どめ老木の咲きにけり

捕虜居る御寺の咲きにけり

うたたねをよび起されてかな

朱雀門花見車のもどりけり

春潮や海老はね上る岩の上

むかうむいて茶摘女の歌ひけり

炭とりて反古籠にしてくるる春

寶塔の鐸落ちて響くの庭

翠帳に薫すの恨みかな

石の上に春帝の駕の朽ちてあり

湖見えて道岐れたる焼野かな

散るの掃かれずにある窪みかな

忽然と石割れ出る内裏雛

白桃にかくれまします古雛

雛より小さき嫁を貰ひけり

春の山筧に添うて登りけり

山寺や壁一杯の涅槃像

暖き乗合船の京言葉

爐塞いで師の坊来ますあいそなき

難波女や軍になれて畑打つ

女木に登り軍見てゐるかな