子規
春の夜やくらがり走る小提灯
子規
春の夜や石壇上るともし哉
子規
春の夜のともし火赤し金屏風
虚子
春の夜の金屏くらし大広間
子規
春の夜や寄席の崩れの人通り
虚子
春の夜の金屏に鴛鴦のつがひかな
子規
春の夜の妹が手枕更けにけり
漱石
春の夜を辻講釈にふかしける
漱石
春の夜を兼好緇衣に恨みあり
漱石
春の夜のしば笛を吹く書生哉
子規
夕顔の巻よむ春の夜は更けて油乏しく灯消えんとす
子規
春の夜の衾しかんと梅の鉢も蕪村の集も皆片よせぬ
子規
くれなゐのとばりをもるるともし火の光かすかに更くる春の夜
虚子
春の夜や机の上の肱まくら
晶子
たまくらに 鬢のひとすぢ きれし音を 小琴と聞きし 春の夜の夢
晶子
妻わかうて 京のなまりの 失せがたな 二条に似たる 街の春の夜
漱石
春の夜の雲に濡らすや洗ひ髪
虚子
春の夜や恋の奴の二人住み
虚子
春の夜ををかしがらせぬたいこもち
晶子
春の夜は東山よりくると云ふ寺寺靄し月のぼるとき
千樫
よろづみな闇にただよふ春の夜のま底に深く湖はしづめり