葛城王
ますらをと思へるものを太刀佩きて可爾波の田居に芹ぞ摘みける
好忠
根芹摘む春の澤田に下り立ちてころもの裾の濡れぬまぞなき
好忠
春ごとに澤べにおふる芹の根の年とともにぞわれはつみつる
源氏物語・椎が本
雪深き汀の小芹誰がために摘みかはやさん親無しにして
俊頼
こころざし 深きみたにに つみためて いしみゆすりて 洗ふ根芹ぞ
俊成
しづのめは かはたの原に 摘む芹も 誰がためにとか 袖ぬらすらむ
我ためか鶴はみのこす芹の飯 芭蕉
我事と鯲のにげし根芹かな 丈草
何やらの時見置たる根芹かな 千代女
これきりに徑盡たり芹の中 蕪村
古寺やほうろく捨るせりの中 蕪村
我影の白髪をつまむ田井の芹 青蘿
一籠の蜆にまじる根芹哉 子規
この岡に根芹つむ妹名のらさね 子規
泥川を芹生ひかくすうれしさよ 子規
芹洗ふ藁家の門や温泉の流 漱石
晶子
わが袂家鴨の脚ににごしたる水に濡れつつ摘みし芹の葉
憲吉
今日にしてはじめて聞ける人のこゑ崖したの川に芹摘みてとほる
曇天の水動かずよ芹の中 龍之介
腰高く双手伸して芹つめり 泊雲
芹つむや騒ぐ家鴨に眼やりつゝ 泊雲
芹つんで暮れて戻りし子供哉 石鼎
この沢の真清水の芹誰ぞ摘まむ 亞浪
薄曇る水動かずよ芹の中 龍之介