雲雀あがるあがる土踏む足の大きいぞ
岩床走る水の冷たき崖椿
萱の根の甘さ噛み居る暖かき
潮あとの海月とろけつ昼霞
涸れ沼の芦けぶり居る野焼きかな
畦切れば螻夥し春の水
芦生ふるかぎり潮押す 朧かな
この沢の真清水の 芹誰ぞ摘まむ
春風や動くともなき雲一片
苔水を蜂ふくみ去りふくみ去る
残り菜の紫深き雪間かな
闇の空よりちらちらと花散り来たり
石楠花の山気澄まして暮れゆくか
夜桜や空の深さに面さらす
木の芽の息が青空に立ち昇るなり
浜道や砂の下なる残り雪
水のなき川ばかりなる昼霞
夕蛙旅はさびしと誰がいへる
駒鳥の声水は常世に碧くして
山吹や庭の隅からくらくなる
屋根の上に凧来てをりし春の風
良寛さまの山への道よ巣鳥啼き