夕風や紅葉を散らす山鴉
寒菊を懐炉を市に求めけり
冬木立僧園に人ありやなし
電車通ふ度びの地ひびき冬籠
楢山時雨藪鳥なほも静まらで
穂拾ひの我子に暮るる寒さかな
ぬくみなほ我れに母ある蒲団かな
凩や雲裏の雲夕焼くる
冬木中一本道を通りけり
大霜の枯蔓鳴らす雀かな
汐いつか満ちし静けさ江の落葉
雪このかた馬も放たぬ枯野かな
氷上に霰こぼして月夜かな
家の向き日なたとなりし冬田かな
氷挽く音こきこきと杉間かな
霜下る夜空に木々の犇めけり
冬木中鳥音慕うて歩きけり
夕千鳥一叢芦の淋しけれ
枇杷の花しくしく氷雨下りけり
よれよれに枯色さしむ風の櫨
雪月夜蘆間の寝鳥しづまりぬ
雪霞野の萱骨のとげとげし
足袋裏を向け合うて炉の親子かな