子が居ねば一日寒き畳なり
ぎつしりの材木の底にある冬日
寒天の日輪にくさめしかけたり
吹き入りし畳みの木の葉暮れにけり
薬のんでは大寒の障子を見てゐる
ほつくりと蒲団に入りて寝たりけり
紐足袋の昔おもへば雲がゆく
世に遠く浪の音する深雪かな
常磐木の懐に雪舞ひ入りて
水鳥のゐて土手をゆく心なり
日あたつて来ぬ綿入の膝の上
凍らんとするひそまりの蔓のさき
散り紅葉拾うて見たれ捨てにける
立冬やとも枯れしたる藪からし
伏せ葱に夕三日月の影しけり
枯萩のむざと刈られし昨日かな
青天やなほ舞う雪の雪の上
硝子戸の片すみにある枯枝かな
咳入るや涙にくもるシクラメン
丑満の雪に覚めゐて咳殺す
霙るるや燈華やかなればなほ
枯菊を焚いて鼻澄む夕べかな