和歌と俳句

臼田亞浪

子が居ねば一日寒き畳なり

ぎつしりの材木の底にある冬日

寒天の日輪にくさめしかけたり

吹き入りし畳みの木の葉暮れにけり

薬のんでは大寒の障子を見てゐる

ほつくりと蒲団に入りて寝たりけり

紐足袋の昔おもへば雲がゆく

世に遠く浪の音する深雪かな

常磐木の懐に舞ひ入りて

水鳥のゐて土手をゆく心なり

日あたつて来ぬ綿入の膝の上

凍らんとするひそまりの蔓のさき

散り紅葉拾うて見たれ捨てにける

立冬やとも枯れしたる藪からし

伏せに夕三日月の影しけり

枯萩のむざと刈られし昨日かな

青天やなほ舞う雪の雪の上

硝子戸の片すみにある枯枝かな

咳入るや涙にくもるシクラメン

丑満の雪に覚めゐて咳殺す

霙るるや燈華やかなればなほ

枯菊を焚いて鼻澄む夕べかな