宵々に雪踏む旅も半ばなり
水鳥に風の木華の降ることよ
もかもかの手袋に手をつかまれし
寒い月夜の岩がざぶりと浪浴びて
ばらくづれたり師走の畳の上
霜の夜や枝張り合うて楢櫟
人形の顔も夜となる雪の声
夜着の中足がぬくもるまでの我れ
汚れつつ木蔭へ雪のちさくなり
鱈ちりの炭の尉たちやすき夜や
野焚火の四五人に空落ちかかる
寒風の椿の朱唇ただれたり
雪まろげ雪にまろびてうまごらは
日向道とれば木の葉のはらはらす
もの枯るる音のたのしき日向ぼこ
寒菊の小菊を抱いて今日ありぬ
わが魂を吹きさらすこの寒天ぞ
鶏頭しよんぼり落葉時雨の黄昏るる
観音の庭の紅葉は散るばかり
雪の層波なし華厳落ちに落つ