萱刈りのかくて日暮らす山小春
風の声碧天に舞ふ木の葉かな
妻も子もはや寝て山の銀河冴ゆ
大き月照り出づる霜の木立かな
枯萩の髄脈々と雨氷る
すがりゐて草と枯れゆく冬の蠅
枯れ蔓のかげす櫺子の除夜の鐘
雪の中声あげゆくは我子かな
お高祖頭巾のおとがひ細き火影かな
皆あたれ炉の火がどんと燃ゆるぞよ
軒の氷柱に息吹つかけて黒馬よ黒馬よ
今日も暮るる吹雪の底の大日輪
暮れゆくや寒濤たたむ空の声
野ゆく子に余所なる冬日暮れにけり
顔よせて馬が暮れをり枯柏
氷上の積藁に通ふ鼠かな
丹念に炭つぐ妻の老いにけり
霜の声眉にかぶさる山もなし
目白なく日向に妻と坐りたり
塀添ひに風流れをり冬の月
雪原や落ち方の月隈見する