汽車道の一すぢ長し冬木立 子規
犬吠て里遠からず冬木立 子規
大庭や落葉もなしに冬木立 子規
冬木立隠士が家の見ゆる哉
冬木立五重の塔の聳えけり
山門を出て八町の冬木立 子規
門前のすぐに阪なり冬木立 子規
横須賀や只帆檣の冬木立 子規
土堤一里常盤木もなしに冬木立 漱石
冬木立寺に蛇骨を伝へけり 漱石
半鐘とならんで高き冬木哉 漱石
鳥飛んで夕日に動く冬木かな 漱石
立籠る上田の城や冬木立 漱石
兀として鳥居立ちけり冬木立 漱石
筋違に提灯通る冬木立 虚子
黒谷の山門高し冬木立 虚子
城あとの石垣のこる冬木立 虚子
雉の尾の走りうせけり冬木立 虚子
土手道や酒売る家の冬木立 碧梧桐
冬木立僧園に人ありやなし 亞浪
かくて住みし応挙ぞと知る寺冬木 碧梧桐
学校の冬木に雉の棲める朝 碧梧桐
椀程な塚の上にも冬木かな 碧梧桐
小鳥ゐて朝日たのしむ冬木かな 鬼城
山蔭の水にうつりし冬木かな 石鼎
冬木中一本道を通りけり 亞浪
家を出づれば冬木しんしんとならびたり 山頭火
冬木二本憩ふ旅人をはさみけり 喜舟
冬木立ランプ点して雑貨店 茅舎
冬木中鳥音慕うて歩きけり 亞浪
冬木立人来り人去る 山頭火
蕭々と星を呼びゐる冬木かな 喜舟
窓の高さのすくすくとしてゐる冬木 碧梧桐
大空に伸び傾ける冬木かな 虚子
妻とわれに垣の内外の冬木かな 石鼎