和歌と俳句

枯尾花

ともかくもならでや雪のかれ尾花 芭蕉

なきがらを笠にかくすや枯尾花 其角

ともかくも風にまかせてかれ尾花 千代女

根は切で極楽にあり枯尾ばな 千代女

狐火の燃えつくばかり枯尾花 蕪村

枯尾花野守が鬢にさはりけり 蕪村

我も死して碑に邊せむ枯尾花 蕪村

秋去りていく日になりぬ枯尾花 蕪村

水際の日に日に遠しかれを花 暁台

芥火の烟の中に枯尾花 暁台

枯 々て光をはなつ尾花哉 几董

舟慕ふ淀野の犬やかれ尾花 几董

かれ芒かさりかさりと夜明けたり 一茶

かれ芒人に売れし一つ家 一茶

何として忘ませうぞかれ芒 一茶

招く手はなけれど淋し枯薄 子規

一葉
かれてたつただ一もともさびしきは嵐の庭の尾花なりけり

馬の尾に折られ折られて枯尾花 子規

七湯の烟淋しや枯芒 子規

子規
武蔵野の冬枯芒婆婆に化けず梟に化けて人に売られけり

蒲殿の愈悲し枯尾花 漱石

石標や残る一株の枯芒 漱石

枯芒北に向つて靡きけり 漱石

尾花枯れて焼石多き裾野かな 虚子

憲吉
いにしへのこれの狩場の枯尾花きたり遊びてひと日暮せり

憲吉
もののふの古きかり場のかれ尾花今は長くて胸をし埋む

憲吉
胸をうづむ尾花が末は山すそへ光りなびきて暮れつづきけり

友にきくセメント岩や枯芒 山頭火