初しもや煩ふ鶴を遠く見る
口切や梢ゆかしき塀どなり
石に詩を題して過る枯野かな
三日月も罠にかゝりて枯野哉
鴨遠く鍬そゝぐ水のうなり哉
乾鮭も登るけしきや冬木立
炭売に日のくれかゝる師走哉
にしき木の立聞もなき雑魚寝哉
行年の女歌舞妓や夜のむめ
いざや寐ん元日は又翌の事
斧入て香におどろくや冬こだち
里ふりて江の鳥白し冬木立
しぐるゝや我も古人の夜に似たる
いざ雪見かたちづくりす簔と笠
玉霰漂母が鍋をみだれうつ
雪の旦母屋のけぶりめでたさよ
としひとつ積るや雪の小町寺
ゆく年の瀬田を廻るや金飛脚
狐火の燃えつくばかり枯尾花
枯尾花野守が鬢にさはりけり
炉に焼てけぶりを握る紅葉哉
里過て古江に鴛を見付たり
寺寒く樒はみこぼす鼠かな
真がねはむ鼠の牙の音寒し
冬ごもり仏にうときこゝろ哉