鍋さげて淀の小橋を雪の人
雨の時貧しき簔の雪に富り
冬ごもり母屋へ十歩の椽伝ひ
我頭巾うき世のさまに似ずもがな
冬木立家居ゆゝしき梺かな
愚に耐よと窓を暗す雪の竹
我のみの柴折くべるそば湯哉
紙ぶすま折目正しくあはれ也
氷る燈の油うかゞふ鼠かな
炭取のひさご火桶に並び居る
我を厭ふ隣家寒夜に鍋を鳴らす
霊運もこよひはゆるせとし忘れ
御経に似てゆかしさよ古暦
すゝ掃や調度少き家は誰
乾鮭や琴に斧うつひゞきあり
簔笠の衣鉢つたへて時雨哉
小春凪真帆も七合五勺かな
凩に鰓吹るゝや鉤の魚
霜百里舟中に我月を領す
鰒汁や五侯の家のもどり足
ふく汁やおのれ等が夜は朧なる
居眠りて我にかくれん冬ごもり
冬ごもり壁をこゝろに山に倚
枇杷の花鳥もすさめず日くれたり