麦蒔や百まで生る皃ばかり
古池に草履沈みてみぞれ哉
埋火や物そこなはぬ比丘比丘尼
大雪と成けり関の戸ざしごろ
鍋敷に山家集有り冬ごもり
桃源の路次の細さよ冬ごもり
雪沓をはかんとすれば鼠ゆく
念ごろな飛脚過ぎゆく深雪かな
鴛や国師の沓もにしき革
埋火や春に減りゆく夜やいくつ
鶯の逢ふて帰るや冬の梅
畠にもならでかなしき枯野哉
冬ごもり妻にも子にもかくれん坊
寒梅や梅の花とは見つれども
みのむしの得たりかしこし初時雨
音なせそ叩くは僧よ鰒じる
河豚の面世上の人をにらむ哉
みのむしのぶらと世にふる時雨かな
化けさうな傘かす寺の時雨かな
しぐるゝや鼠のわたる琴の上
古傘の婆娑と月夜の時雨哉
雪折や雪を湯に焚釜の下
雪の暮鴫はもどつて居るような
雪舟の不二雪信が佐野いづれか寒き
路次の闇親子除け合ふ頭巾かな