寒月や門をたゝけば沓の音
旅立や顔見せの燈も見ゆるなる
売喰の調度のこりて冬ごもり
めし粒で紙子の破れふたぎけり
此冬や帋衣着ようとおもひけり
新右衛門じや足を誘ふ冬至かな
みよしのやもろこしかけて冬木立
宿老の紙子の肩や朱陳村
宿かせと刀投出す吹雪哉
足袋はいて寝る夜物うき夢見哉
書記典主故園に遊ぶ冬至哉
細道になり行声や寒念仏
極楽の近道いくつ寒念仏
貧乏な儒者訪ひ来ぬる冬至哉
一瓢のいんで寝よやれ鉢たゝき
木のはしの坊主のはしやはちたゝき
終に夜を家路に帰る鉢たゝき
子を寐せて出て行く闇や鉢たゝき
庵買うて且うれしさよ炭五俵
おとろひや小枝も捨ぬとし木樵
闇の夜に終る暦の表紙かな
樵する年木の枝に雀かな
年の内の春ゆゆしさよ古暦
小僧等に法問させて年忘
節季候や顔つつましき小風呂敷