去来
わすれ得ぬ空も十夜の泪かな
許六
禅門の革足袋おろす十夜哉
許六
下京の果てのはてまで十夜かな
蕪村
尼寺や十夜に届く鬢蔓
蕪村
あなたうと茶もだぶだぶと十夜哉
召波
人声の小寺にあまる十夜かな
白雄
樒売家も十夜のともしかな
太祇
おどらせぬむすめ連行十夜哉
太祇
夜歩行の子に門で逢ふ十夜かな
太祇
人去て暁くらき十夜かな
几董
薮寺や十夜のにはの菊紅葉
一茶
菜畑を通してくれる十夜かな
一茶
もろもろの愚者も月見る十夜哉
一茶
菜畠や横すじかひの十夜哉
一茶
田から田へ真一文字や十夜道
子規
渋色の袈裟きた僧の十夜哉
子規
月影や外は十夜の人通り
子規
野の道や十夜戻りの小提灯
虚子
真如堂に知る僧のある十夜かな
鬼城
お机に金襴かけて十夜かな
泊雲
欠伸して人に見られし十夜かな
泊雲
聴法に柱が邪魔の十夜かな
泊雲
お十夜や説法にけて月に歩す
昼たかし霜に十夜の鐘がなる 石鼎
つま上り山門までや十夜寺 石鼎
継ぎ継ぎて蝋新しき十夜かな 石鼎
運び来る僧みな若し十夜粥 石鼎
とぎすます月に雲ひく十夜かな 石鼎
草城
裏の寺十夜の鉦をならしけり
草城
お十夜やすこし化粧ひて寺の妻
草城
八日目のかかる月夜や十夜寺
たかし
鉦講のあらかしましの十夜かな
たかし
蝋涙に肩打たれたる十夜かな
たかし
灯の数の殖えて淋しき十夜かな
たかし
稚子が降らす花を拾ひし十夜かな
お十夜や弥勒菩薩の御声は 喜舟
浦寺に波に寄るべの十夜かな 喜舟
青畝
善男をなぶりもぞする十夜婆
万太郎
柿の苗うる店ばかり十夜かな
青畝
十夜僧鉢合せして笑ひけり