和歌と俳句

炭 太祇

木戸しまる音やあら井の夕千鳥

水仙や畳の上に横たふし

よるみゆる寺のたき火や冬木立

霄やみのすぐれてくらし冬の雨

十月の笹の葉青し肴籠

つめたさに箒捨けり松の下

人顔も旅の昼間や神無月

かみ無月旅なつかしき日ざし哉

御築地に見こす山辺やいく時雨

千人の日用そろふや雪明り

人去て暁くらき十夜かな

とする間に水にかくれつ初氷

霜おける畠の冴へや鍬の音

下戸ひとり酒に迯たる火燵

木葉散雨うちはれて夜明たり

人疎し落葉のくぼむ森の道

木がらしや手にみえ初る老が皺

木枯や大津脚絆の店ざらし

ぬれいろをこがらし吹や水車

昼になつて亥子と知りぬ重の内

たそがれに吹おこす炭の明り哉

獺に飯とられたる網代かな

水指のうつぶけてある かな

花もなき水仙埋む落ばかな

飯喰ふて暇にしてみる冬至