木戸しまる音やあら井の夕千鳥
水仙や畳の上に横たふし
よるみゆる寺のたき火や冬木立
霄やみのすぐれてくらし冬の雨
十月の笹の葉青し肴籠
つめたさに箒捨けり松の下
人顔も旅の昼間や神無月
かみ無月旅なつかしき日ざし哉
御築地に見こす山辺やいく時雨
千人の日用そろふや雪明り
人去て暁くらき十夜かな
とする間に水にかくれつ初氷
霜おける畠の冴へや鍬の音
下戸ひとり酒に迯たる火燵哉
木葉散雨うちはれて夜明たり
人疎し落葉のくぼむ森の道
木がらしや手にみえ初る老が皺
木枯や大津脚絆の店ざらし
ぬれいろをこがらし吹や水車
昼になつて亥子と知りぬ重の内
たそがれに吹おこす炭の明り哉
獺に飯とられたる網代かな
水指のうつぶけてある 寒かな
花もなき水仙埋む落ばかな
飯喰ふて暇にしてみる冬至哉