きりぎりすわすれ音になくこたつ哉 芭蕉
影法師の横になりたる火燵哉 丈草
つくづくともののはじまる火燵哉 鬼貫
腰ぬけの妻うつくしき巨燵かな 蕪村
巨燵出て早あしもとの野河かな 蕪村
去んで来る人むつまじき火燵哉 蕪村
火を運ぶ旅の巨燵や夕嵐 太祇
草の戸や巨燵の中も風の行 太祇
辞義をして皆足出さぬ巨燵哉 几董
思ふ人の側へ割込む炬燵哉 一茶
次の間に行灯とられしこたつ哉 一茶
おのが身になれて火のない火燵哉 一茶
川縁や炬燵の酔をさます人 一茶
うすうすと寝るや炬燵の伏見舟 一茶
づぶ濡の大名を見る炬燵哉 一茶
死下手とそしらば誹れ夕炬燵 一茶
何諷ふ炬燵の縁をたたきつつ 一茶
われは巨燵君は行脚の姿かな 子規
巨燵から見ゆるや橋の人通り 子規
人もなし巨燵の上の草双紙 子規
仏壇も火燵もあるや四畳半 子規
衣脱だ帝もあるに火燵哉 漱石
亡き人の向ひをるよな火燵かな 碧梧桐
老妻の炬燵にゑへるあくびかな 鬼城
窓一つ明るく淋し火燵の間 花蓑
児らは火燵に数よみて暮れそめし部屋に 山頭火
ランプ釣つて炬燵へだてゝ友うれし 石鼎
折鶴をやがて千折る炬燵かな 喜舟
火燵のかげに物がくれなる汝れ 碧梧桐
牛繋ぎし鼻づらよ火燵の我 碧梧桐
火燵にあたりて思ひ遠き印旛沼 碧梧桐
火燵深く居て軒一枝の垂れ紅葉 泊雲
小買物火燵の上に並べけり 櫻坡子
去ぬることを忘れないで仰向になつて火燵 碧梧桐
電気炬燵に膝すこしあて老母かな しづの女
緋鹿子にあご埋めよむ炬燵かな 久女
嫂や炬燵に遠く子を膝に 風生
蜜柑食ふ子の息みゆる炬燵かな 石鼎
更け炬燵聊斎志異のおもしろく 青邨