間違へて笑ふ頭巾や客二人
炉開きや故人を会すふき鱠
冬籠る今戸の家や色ガラス
芭蕉忌や吾に派もなく伝もなし
一箱の林檎ゆゆしや冬籠
雑炊のきらひな妻や冬籠
冬ごもる人の多さよ上根岸
日あたりのよき部屋一つ冬籠
咲き絶えし薔薇の心や冬籠
冬籠盥になるる小鴨哉
鶏頭の黒きにそそぐ時雨かな
口こはき馬に乗りたる 霰哉
道哲の寺を過ぐれば冬田哉
山茶花に新聞遅き場末哉
霜月の梨を田町に求めけり
のびのびし帰り詣でや小六月
のら猫の糞して居るや冬の庭
煤払の埃しづまる葉蘭哉
天井無き家中屋敷や煤払
年忘一斗の酒を尽しけり
吉原ではぐれし人や酉の市
結びおきて結ぶの神は旅立ちぬ
風呂吹の一きれづつや四十人
千駄木に隠れおほせぬ冬の梅