和歌と俳句

正岡子規

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色さめし造り花売る小春かな

薬のむあとの蜜柑や寒の内

君を呼ぶ内証話や鮟鱇汁

鮟鱇ありと答へて鍋の仕度かな

傾城を買ひに往く夜や鮟鱇鍋

新宅は神も祭らで冬籠

鮟鱇鍋河豚の苦説もなかりけり

隣住む貧士にを分ちけり

烏帽子著よふいご祭のあるじ振

病床やおもちや併べて冬籠

朝霜に青き物なき小庭哉

枯尽くす糸瓜の棚の氷柱

貧をかこつ隣同士の寒鴉

軸の前支那水仙の鉢もなし

大事がる金魚死にたり枯しのぶ

冬枯の中の錦を織る処