和歌と俳句

餅 餅つき

くれくれて餅を木魂のわびね哉 芭蕉

ありあけも三十日にちかし餅の音 芭蕉

世の花や餅の盛りの人の声 鬼貫

餅つきや焚火のうつる嫁の皃 召波

餅の粉の家内に白きゆふべかな 太祇

さむしろや餅を定木に餅を切 一茶

餅を搗く音やお城の山かつら 子規

隣住む貧士に餅を分ちけり 子規

寐て聞くやぺたりぺたりと餅の音 漱石

餅搗や小首かたげし鶏の面 漱石

餅搗や明星光る杵の先 漱石

一臼は黄なる餅つく貧しさや 碧梧桐

機仕舞ふ一間広さや餅莚 碧梧桐

梅三分咲く餅搗の日取かな 碧梧桐

雀来て歩いてゐけり餅筵 鬼城

餅搗やほどなく消えし芝の火事 万太郎

餅搗や竈火明りにこぼれ米 爽雨

餅搗のみえてゐるなり一軒家 青畝

餅搗くや框にとびし餅のきれ 素十

餅板の上に庖丁の柄をとんとん 素十

焚きそへていぶる霜木や餅を搗く 万太郎

餅の音深雪のものとなりにけり 万太郎

餅搗や小鳥来てゐるうめもどき 青邨

餅搗く声ばかり聞かされてゐる 山頭火

どしやぶり、正月の餅もらうてもどる 山頭火

暮れてまだ搗いて餅のおいしからう 山頭火

朝日まぶしい餅をいただく 山頭火

餅二つ、けふのいのち 山頭火

餅の音あけはなれけり曇りつゝ 万太郎

杵肩に餅搗きに行く畦伝ひ たかし

餅搗の水呑みこぼすあぎとかな たかし

かるがると上る目出度し餅の杵 虚子

餅搗くや草の庵の這入口 虚子

神棚の前より敷きぬ餅蓆 虚子

炬燵寝の若者起きて餅を搗く 蕪城

爆音の間は絶えつつも餅の音 楸邨

明日のため残せし餅や月させり 楸邨

餅搗や田におどろける石叩 秋櫻子

餅搗きし家ありすでに音ひそめ 誓子

友搗きし異形の餅が腹中へ 三鬼

女呉れし餅火の上に膨張す 三鬼

餅食へば山の七星明瞭に 三鬼

餅を食ひ出でて深雪に脚を挿す 三鬼

書を読まず搗き立ての餅家にあれば 三鬼

餅搗きし父の鼾声家に満つ 三鬼

臼いただきに白餅成りて妻潔し 草田男

捨て水が地面流るる餅の味 耕衣

搗き終へし餅にまどかな形与ふ 誓子

餅搗のやとはれ衆の老いにけり 汀女

餅つくと東京者の咳一つ 静塔

餅搗くに忌火屋殿の火をもてす 誓子

餅は皆にじり居るらし雪の暮 耕衣

枯草を扇ぎいたりき旅老人 耕衣

禅寺の最大の餅三升餅 誓子


初雪 初氷 寒さ 冬木立 枯木 冬枯 枯尾花 冬の山 枯野 みそさざい 都鳥 千鳥 冬の海 河豚 海鼠 冬ごもり 埋火 焚火 炬燵 風邪 日向ぼつこ 北風 冬の雨 冬の月 冬至 柚湯 クリスマス 師走 年の市 煤払い 年忘れ 歳の暮 行く年 大晦日